ＴＨＥ　ＢＯＸＩＨＧ - 田舎侍

2024/05/04 (Sat) 11:16:03

井上尚弥　ＶＳ　ルイス・ネリ

様々な面々が「予想」を口にし、それぞれの事情を絡ませて書き立ててきた。なんの意味があるのかと嗤ってしまう。
井上のことを「面白く」思っていない、とくにボクシングの本場を自負するアメリカン人たちの多くが、ネリの優勢を伝えている。相場では井上が圧倒しているというが、本来的にアジア人への差別意識が高いアメリカ人が井上を認めているはずもない。だから、いくら賭けの相場が「井上優勢」となっていても、「いや、ネリが勝つ」という意見が重ねて伝えられる。

井上がアメリカではなく、日本を主戦場にしていることも批判の対象になった。対して、ネリはメキシコ人だが、アメリカで戦ってきた。だから「本物」なのだという意見である。
それに関しては「は？」と言わざるを得ない。
ボクシングはランキング制である。明確に王者が据えられ、指名試合の権利を持つ一位から順位が決定されている。
戦い場所の問題ではない。過去に誰とやって、どんな戦績を残したかが重要視される必要がある。ボクシングはそれがどのスポーツよりも明確なのだ。だからこ、あの亀田家の「王者」たちは批判の対象になり続けた。

ユーチューバーの番組はサムネイルで注目を集めたがる。ネット記事以上に「凝る」のが普通だ。だからこそ、井上優勢と伝えながらも「ネリは過去最強」「危険」「パンチがある」などと続ける必要がある。はっきりいって、参考にならない。

参考にすべきは井上、ネリ双方の関係者の弁だ。
優れた陣営ほどインサイドワークにも細心の注意を払う。彼らの発言、額面で受け取ってはならない。もちろん、戦う当人の発言も然りだ。手の内をバラす、口を滑らせるはずもなく、常に相手が聞いている（見ている）ことを大前提にして伝えている。けっしてマスコミへのサービスや選手としての義務感から答えているのではない。彼らの発言はすべて、相手陣営を惑わし、迷わせるためのものである。

勝敗を占う意味で、重要な発言があった。
フルトンの談である。彼はアウトボクシングとカウンター技術を持ち合わせた名選手だ。そのフルトンが、ボディージャブが見えなかったと話した。
アウトボクサーは目がいい。相手を全体で観察できる目を持っているということだ。そのフルトンをしても、ボディジャブを見切れなかったばかりか、あれを
「見えなかった」と認めた。しかも、パンチ力というよりもタイミングに手こずったのだと。
タイミングに長けているのはフルトンも同じだった。そのお株を奪われたという。パンチ力ではない、といいうのはフルトンのプライドが許さなかったからだと思われるが、タイミングの巧みさを認めた点は非常に大きい。しかも、彼はサウスポーだ。タイミングが生命線になる試合だということはわかっていたのに、見切れず、屈したという意味である。

ネリはパンチがある。
そうかもしれない。
好戦的である。
でしょうね。
では、そのパンチを、左を、なんの策もなしに振り回すのか？　サンドバッグをたたくように？
それは考えられないだろう。
左を打つなら、右から入る。当然、ジャブから展開する。
ジャブの探り合いでネリは勝てるか。
さらに、彼はプルカウンターを得意とする。相手に打たせ、耐え、自分のパワーで打ち返し、展開を返るという戦術に徹する。乱戦が得意だということとイコールだ。
美しいまでのカウンター、は山中戦くらいのものだ。
では、井上はプルカウンターの戦術に引きこまれるか。
相手の土俵では戦わない。それも井上の優れた点である。足を使い、左のショートフックを狙うでしょうね。

一ラウンド。
ジャブの探り合い。
そのさい、井上が「見えない」パンチを当てられるか。あのフルトン戦のように。
それで勝敗がわかる。